希望と予測の混同の危険性 ~幻の台湾沖航空戦~
太平洋戦争末期の1944年10月、
新聞に大きな戦果が掲載されました。
『台湾東方沖にて、
米軍空母19隻、戦艦4隻、撃沈破45隻
敵の兵力の過半数を壊滅』
これがどのぐらいスゴイのか、簡単に言いますと、
『米軍の太平洋艦隊のほぼ壊滅』を意味します。
当時、日本はすでに制空権を失い、昼も夜も関係なく空襲に見舞われておりました。
そんな中の大戦果です。
国民の心は大いに沸き立ちます。
形勢逆転か!?
期待に胸を膨らませたその8日後、
米軍の大規模艦隊がフィリピンレイテ島に上陸を始めました。
驚いたのは国民。。
ではなく、なんと大本営(日本軍の総本部)でした。。
実は、台湾沖での戦果は、誤報でした。。
誤報と言えばまだ聞こえが良いでしょう。
もっと正確に言うと、
現地部隊は『希望的結果』を上司に報告していたのです。。
当時の日本の情勢を示す資料が残っております。
そこには、パイロットの技量を最高Aから最低Dまでで評価しているのですが、
度重なる戦闘で熟練パイロットは減少し、
最高のA評価はたったの15%強、全体の40%は初心者レベルのD評価でした。
こんなレベルだと、昼間の出撃では的にされるおそれがあるので、
夜間の出撃となりました。
しかし、CやD評価のパイロットには、夜の暗闇で艦船を見つけるのも困難です。
さらに、もし艦船を見つけ、攻撃することができても
攻撃が当たっているのかどうかもよく分かりません。
すると、こんなことが起きました。
出撃して帰還したパイロットにヒアリングを取ります。
パイロット
『大きな水柱が見えた気がします。』
『大きな音と火炎が見えたような感じです。』
『敵艦船の真上から爆弾を投下したはずです。』
上司
『なるほど!
ということは撃沈に違いない!
最低でも大破(大きな損害)は与えただろう!』
さらに。。
出撃した航空機は90機以上だが、帰還したのは50機。
そんな時には、
上司
『なるほど!
そんなに“激戦”だったということは、
敵にも相当の損害を負わせた“はず”!』
と、あれよあれよと希望的観測で戦果が積み上がっていきます。
気がつけば、
『台湾東方沖にて、
米軍空母19隻、戦艦4隻、撃沈破45隻
敵の兵力の過半数を壊滅』
となってました^^;
オイオ~イ・・
結果を見る時、特に悪い結果が予想される時というのは、
確認するのに勇気がいりますよね。
でも、そんな時こそ正確に数字を取らないと、
もっと悲惨な目に遭うこととなります。
結果的に当時の日本軍も予期せぬ米軍の大艦隊の来襲により、
レイテ島は2ヶ月足らずで陥落することとなります。
傷を見る時は、正確に、そして早く上司へ報告しましょう。
それが、皆さんの事業を長く成長させる一歩となります。
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[まとめ] 希望的観測は倒産への第一歩。どんな結果であれ受け入れる。
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