総合選抜と一般選抜の違い

「うちの子は総合型選抜と一般選抜、どちらが向いているのかしら?」「最近よく聞く総合型選抜って、昔のAO入試とは何が違うの?」そんな疑問を抱えていませんか?

高校生の子供を持つ親にとって、大学受験は人生を左右する重要な選択です。特に2021年から始まった総合型選抜は、従来の一般選抜とは全く異なる評価基準で合否が決まるため、正しい理解なしには最適な受験戦略を立てることができません。

この記事では、総合型選抜と一般選抜の基本的な違いから、子供の特性に合った選び方、併願戦略まで、2026年受験に向けて親が知っておくべき情報を網羅的に解説します。読み終える頃には、お子様にとって最適な受験ルートが明確になり、合格への道筋が見えてくるでしょう。

総合選抜と一般選抜の違いとは?基本的な仕組みを理解しよう

大学入試には大きく分けて「総合型選抜」「学校推薦型選抜」「一般選抜」の3つの方式があります。この中でも特に混乱しやすいのが、総合型選抜と一般選抜の違いです。

総合型選抜の基本的な仕組みと特徴

総合型選抜は、2021年から従来のAO入試に代わって導入された新しい選抜方式です。最大の特徴は、学力だけでなく受験生の意欲や適性、人物像を総合的に評価することにあります。

具体的な選考方法は大学によって異なりますが、一般的には以下のような流れで進みます:

第一次選考(書類審査)

  • 志望理由書
  • 自己推薦書
  • 調査書
  • 活動報告書

第二次選考(面接・実技等)

  • 個人面接
  • 小論文
  • プレゼンテーション
  • グループディスカッション

出願時期は9月1日以降で、合格発表は11月1日以降となっています。なお、総合選抜の場合、国公立大学でも共通テストを受験せずに受験できる大学もあります。弘前大学、東北大学(文学部、教育学部、法学部、理学部、医学部、歯学部、工学部
農学部)、岡山大学、九州大学の一部など。

逆に、私立大学では共通テストを利用しない総合選抜が一般的で、主に小論文や実技で実施されています。

一般選抜の基本的な仕組みと特徴

一般選抜は従来の一般入試にあたる選抜方式で、主に学力試験の成績によって合否が決まります。評価基準が明確で、点数による客観的な判定が行われるのが特徴です。

国公立大学の場合

  • 大学入学共通テスト(1月中旬)
  • 各大学の個別学力検査(2月下旬~3月)

私立大学の場合

  • 大学独自の入学試験(2月~3月)
  • 共通テスト利用方式

一般選抜では出願資格に特別な条件はなく、高校卒業見込みであれば誰でも受験可能です。また、何校でも併願できるため、受験機会を増やしやすいという利点があります。

ただし、特に国公立大学の場合は、共通テストで足切りと言われる一次選抜が行われて、大学個別の試験にすら挑めないことはあります。

実際に、令和7年度では、前期、中期、後期のすべてで8,812人もの受験生が大学個別の試験を受けることなく不合格となりました。

2段階選抜の取り止め及び緩和により第1段階選抜合格となった者の数等

引用:令和7年度国公立大学2段階選抜実施状況の概要(文部科学省)

上記の資料によると、東京大学が最多の893人が共通テストで足切りにあって個別試験を受験できていません。

総合型選抜と推薦の違いと使い分け

よく混同されがちなのが総合型選抜と学校推薦型選抜の違いです。両者の主な相違点を整理しておきましょう。

比較項目 学校推薦型選抜 総合型選抜
推薦の必要性 高校長の推薦が必須 高校からの推薦は不要
評定平均値 評定平均でボーダーラインが設定されることが多い 条件が緩やか
出願時期 11月1日以降 9月1日以降
重視される要素 高校での成績・活動 個人の意欲志望学部との適性
つまり、学校推薦型選抜は「高校が推薦する優秀な生徒を受け入れる制度」であり、総合型選抜は「大学が求める人材像にマッチする生徒を見つける制度」と考えると分かりやすいでしょう。

総合型選抜の選考方法と評価基準

総合型選抜では、大学ごとに独自の選考方法が採用されています。文部科学省の指針により、学力を測る評価方法の実施が必須となったため、従来のAO入試よりも多面的な評価が行われています。

こちらをご覧ください。

総合型選抜、学校推薦型選抜、一般選抜の区分

引用:【参考資料2-4】大学入学者選抜関連基礎資料集 第4分冊(制度概要及びデータ集関係)(その1)【文部科学省】

総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦選抜(推薦入試)は、小論文等、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目にかかるテスト、資格・検定試験の成績等、もしくは大学入学共通テストいずれか1つを必ず活用、とあります。

そのため、個別試験無しというわけではないという点はしっかり覚えておきましょう。

選抜型(国公立大学・難関私立大学に多い)

  • 小論文やレポートの提出
  • 長文の志望理由書
  • 面接での深い質疑応答
  • 共通テストの併用

対話型(私立大学に多い)

  • 複数回の面談・面接
  • 人物評価や学習意欲の重視
  • 志望動機の深掘り

実技・体験型

  • 模擬授業への参加
  • セミナーやワークショップ
  • 実験・実習への取り組み
  • 体験後のレポート提出
重要:どの方式も大学の「アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)」との適合性が最重視されることです。単に優秀であるだけでなく、その大学で学ぶ明確な目的と意欲を持っていることが求められます。

総合選抜と一般選抜の違いから見るメリット・デメリット比較

総合選抜と一般選抜の違いから見るメリット・デメリット比較

子供にとってどちらの選抜方式が適しているかを判断するためには、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解することが大切です。

総合型選抜のメリット・デメリットと向き不向き

総合型選抜のメリット

  1. 学力以外の強みをアピールできる
    部活動や生徒会活動、ボランティア、研究活動など、学力試験では測れない経験や実績を評価してもらえます。例えば、数学が苦手でも、環境問題に対する深い関心と具体的な活動実績があれば、環境学部での合格可能性が高まります。
  2. 早期に進路が決定する
    年内に合格が決まるため、残りの高校生活を有意義に過ごせます。また、入学前の準備期間が長く取れるため、大学での学びに向けた準備ができます。
  3. 受験機会が増える
    総合型選抜で不合格になっても、同じ大学を一般選抜で再受験することが可能です。これにより、志望校への挑戦回数を増やすことができます。

総合型選抜のデメリット

  1. 準備に時間がかかる
    志望理由書の作成、面接対策、小論文対策など、多方面の準備が必要です。高校3年生になってから急に対策を始めても間に合わない場合が多いです。
  2. 専願が基本
    多くの大学で専願制を採用しているため、合格した場合は必ず入学する必要があります。複数の大学を比較検討する余地が限られます。
  3. 対策方法が不明確
    一般選抜のように明確な出題範囲がないため、何をどこまで準備すればよいか判断が難しい面があります。

総合型選抜で受かる人の特徴

総合型選抜で合格しやすいのは、以下のような特徴を持つ受験生です:

明確な目標と強い意欲を持つ人
「なぜその大学で学びたいのか」「将来何をしたいのか」が明確で、それに向けた具体的な行動を起こしている人が評価されます。
コミュニケーション能力が高い人
面接や討論で自分の考えを論理的に説明できる能力は重要です。ただし、話し上手である必要はなく、真摯に自分の思いを伝えられることが大切です。
継続的な取り組みができる人
一時的な活動ではなく、長期間にわたって継続的に取り組んできた経験があると、意欲や実行力の証明になります。

どっちが難しい?合格率と競争倍率の実態

2020年度の最終データによると、総合型選抜の平均倍率は以下の通りです:

大学区分 平均倍率 特徴
国公立大学 2.2倍 共通テストを課す大学が多い
私立大学 2.2倍 対話型の選考が中心

参考:2024年度 学校推薦型・総合型選抜結果レポート【2024年5月】

一方、一般選抜の倍率は大学・学部によって大きく異なりますが、人気大学では10倍を超えることも珍しくありません。

注意:総合型選抜の倍率だけを見て「簡単」と判断するのは危険です。なぜなら、総合型選抜に出願する受験生は、非常に綿密な小論文の準備と志望する学部との適性をアピールするための行動を続けた人が多いためです。

総合型選抜と一般選抜の割合から見る募集動向

近年、総合型選抜・学校推薦型選抜で入学する学生の割合が急激に増加しています。

選抜方式 私立大学(2020年度) 動向
一般選抜 約50% 減少傾向
学校推薦型選抜 約40% 安定
総合型選抜 約10% 増加傾向

国公立大学でも拡大傾向

  • 東京大学:学校推薦型選抜を導入
  • 京都大学:特色入試(総合型選抜)を実施
  • 多くの国公立大学で募集人員を増加

この傾向は今後も続くと予想されており、2026年受験においても総合型選抜の重要性はさらに高まると考えられます。早めの情報収集と対策が合格への鍵となるでしょう。

2026年受験で知っておくべき総合選抜と一般選抜の違いと実践戦略

2026年受験に向けて、具体的にどのような戦略を立てるべきでしょうか。実践的なポイントを解説します。

総合型選抜の出願条件と準備のポイント

総合型選抜への出願を検討する際、まず確認すべきは各大学の出願条件です。

一般的な出願条件

  • 高校卒業見込み(既卒者も可の場合あり)
  • 専願または併願可(大学により異なる)
  • 評定平均値の基準(設定されている場合)
  • 特定の資格や検定の取得
  • オープンキャンパス等への参加

評定平均値の重要性

国公立大学の学校推薦型選抜では、評定平均値4.0以上を求める大学が多く見られます。例えば:

  • 神戸大学経済学部:4.5
  • 横浜国立大学経営学部:4.3
  • 名古屋大学文学部:4.3
  • 千葉大学文学部:4.5

総合型選抜では評定平均値の条件が緩やかな場合もありますが、調査書は必ず提出するため、高校1年生からの成績が重要になります。

準備すべき書類と対策

志望理由書

最も重要な書類の一つです。以下の要素を含む必要があります:

  • 大学を目指すきっかけとなった経験
  • その経験を通して発見した社会課題
  • 課題解決のために大学で学びたいこと
  • 卒業後のビジョン
活動報告書

高校時代の取り組みを具体的に記述します:

  • 部活動での役割と成果
  • ボランティア活動の内容と学び
  • 研究活動や自主的な学習
  • リーダーシップを発揮した経験
学習計画書

大学入学後の具体的な学習プランを示します:

  • 履修したい科目とその理由
  • 参加したいゼミや研究室
  • 4年間の学習目標
  • 卒業論文のテーマ候補

総合型選抜と一般入試の両立は可能か?

多くの親が気になるのが、「総合型選抜の準備をしながら一般選抜の勉強も両立できるのか」という点です。

側面 メリット デメリット
受験機会 受験機会を最大化できる 時間とエネルギーの分散
合格可能性 総合型選抜で不合格でも一般選抜でリベンジ可能 対策方法の違いによる混乱
精神面 早期合格により精神的な余裕を得られる モチベーション管理の難しさ

上記のメリット、デメリットを考慮した上で、塾講師の立場から言わせてもらうと、ふつーに両立可能です。
そもそも、総合型選抜の対策は必要ですが、それは、【総合型選抜】という独特の受験方式に即した対策が必要という意味であって、そこに膨大な時間を割く必要があるというわけではありません。

むしろ、一般選抜を前提としてしっかりと高校のカリキュラムに沿った学習を続けながら、総合型選抜の対策を行うことが合格のチャンスを広げることになります。

また、大学に入学した後は、高校時代の学習を前提とした上で授業が進められますので、総合型選抜で合格を目指すからと、高校の学習をおろそかにしていると大学入学後にめちゃくちゃ苦労することになります。

特に、理系学部と経済学部は高校時代の学習を絶対にしっかりやっておきましょう。

効果的な両立戦略

時期を区切った対策
  • 高校2年生:基礎学力の向上と活動実績の積み上げ
  • 高校3年生前半:総合型選抜の書類作成と面接対策
  • 高校3年生後半:一般選抜の本格的な受験勉強
共通する対策の活用
  • 小論文力:総合型選抜でも一般選抜でも有効
  • 英語資格:多くの大学で評価対象
  • 基礎学力:総合型選抜でも学力試験が課される傾向
効率的な学習計画
  • 平日は基礎学力向上に集中
  • 週末は総合型選抜の対策
  • 夏休み等の長期休暇で集中的に書類作成

同じ大学で両方受験は可能?併願のルールとスケジュール

多くの大学では、総合型選抜と一般選抜の両方を実施しており、同一大学への複数回の挑戦が可能です。

併願可能なパターン

  • 総合型選抜→一般選抜(同一大学・同一学部)
  • 総合型選抜→一般選抜(同一大学・異なる学部)
  • 総合型選抜(A大学)→一般選抜(B大学)

注意すべき併願制限

  • 専願制の総合型選抜では他大学との併願不可
  • 同一大学内での学部間併願に制限がある場合
  • 合格後の入学辞退ができない場合

2026年受験スケジュール例

時期 総合型選抜 一般選抜
6月 エントリー開始(一部大学) 基礎学力強化
9月 出願開始 過去問演習開始
10-11月 選考実施 センター対策本格化
11-12月 合格発表 直前対策
1-3月 試験実施・合格発表

総合型選抜で受かりやすい大学の見つけ方

志望校選びでは、自分の特性と大学の求める人材像のマッチングが重要です。

アドミッション・ポリシーの分析方法
  • 大学の公式サイトで各学部・学科のアドミッション・ポリシーを詳しく読み込む
  • 「国際的に活躍したい人」「地域社会に貢献したい人」など、具体的な表現から求める人材像を読み取る
  • 可能であれば、過去の合格者がどのような活動や実績を持っていたかを調べる
自分に合った大学を見つけるポイント
  • 自分の興味・関心と学部の専門分野の一致度
  • これまでの活動実績とアドミッション・ポリシーの適合度
  • 将来の目標と大学の教育方針の一致度
  • 立地や環境などの個人的な希望
情報収集の方法
  • オープンキャンパスへの参加
  • 在学生や卒業生との交流
  • 進路指導教員との相談
  • 予備校等の進学相談会への参加
総合型選抜では、学力だけでなく「その大学で学ぶ必然性」が重視されます。なぜその大学でなければならないのか、明確な理由を持つことが合格への第一歩となるでしょう。

まとめ:総合選抜と一般選抜の違いを踏まえた最適な受験戦略

2026年受験において、総合型選抜と一般選抜の違いを正しく理解することは、お子様の大学合格に向けた重要な戦略立案の基盤となります。

重要なポイントの再確認

  1. 総合型選抜は学力+人物評価の総合的な選抜方式
    従来のAO入試から発展し、より厳格な学力評価も含む多面的な選考が行われています。
  2. 早期の準備と継続的な取り組みが成功の鍵
    高校1年生からの評定管理と、志望分野への深い関心に基づく活動実績の積み上げが重要です。
  3. 一般選抜との両立は計画的に行えば可能
    時期を区切った対策と、共通する要素の効率的な活用により、受験機会を最大化できます。
  4. 大学とのマッチングが最重要
    偏差値だけでなく、アドミッション・ポリシーとの適合度を重視した志望校選びが合格への近道です。

総合型選抜(旧 AO入試)に合格する3つのコツ

1 学力(調査書の評定)を上げておく
各科目の評定が見られる大学・学部を受験する場合は、成績を上げておく必要がある

2 特筆できる実績をつくっておく
誰にも負けない強みや特技を持つ受験生は、合格しやすいといわれている

3 プレゼンテーションやコミュニケーションのスキルを高めておく
自分の言葉で落ち着いて話せる受験生の方が、大学に好感を持たれやすい

お子様の特性や志向を見極め、最適な受験戦略を立てることで、2026年受験での成功確率を大幅に向上させることができるでしょう。

大学受験戦略でお悩みの保護者様へ

お子様にとって最適な受験戦略は、その子の個性や特性によって大きく異なります。総合型選抜か一般選抜か、どちらが向いているかわからない場合は、ぜひ専門家にご相談ください。

経験豊富な進路指導のプロフェッショナルが、お子様の状況を詳しくお聞きして、最適な受験戦略をご提案いたしますので、早めの相談が、総合型選抜での志望校合格への確実な第一歩となります。