Googleアナリティクスやその他のアクセス解析ツールで、Instagram広告を出稿していないにもかかわらず「ig / paid」としてセッションが記録されている――こんな不思議な現象に遭遇したことはありませんか?
「現在は広告を止めているのに、なぜか広告経由の流入が計測されている」
「そもそも広告を出したことがないページなのに、paidの表示が出ている」
といった状況は、実は珍しいことではありません。
この記事では、Instagram広告を配信していないにもかかわらず「ig / paid」に分類されるセッションが発生する主な原因と、その確認方法について詳しく解説します。Web担当者やマーケティング責任者の方は、ぜひ参考にしてください。
「ig / paid」とは?基本を押さえよう
まず前提として、「ig / paid」という表記の意味を整理しておきましょう。
これはGoogleアナリティクスにおける参照元/メディアの組み合わせを示しており、以下のような意味を持ちます。
- ig:参照元(source)がInstagram(igはInstagramの略称)
- paid:メディア(medium)が有料広告
つまり、「ig / paid」は「Instagramの有料広告経由でサイトに流入した」という意味です。通常であれば、Instagram広告を配信している場合にのみ記録されるはずのデータです。
しかし実際には、広告を出稿していないにもかかわらず、このラベルが付いたセッションが計測されるケースが存在します。
原因1:過去の広告URL(UTMパラメータ付き)の拡散
これが最も多い原因です。
Instagram広告を配信する際、多くの企業ではURLにUTMパラメータと呼ばれる計測用のタグを付与します。
例えば以下のような形式です。
https://example.com/?utm_source=ig&utm_medium=paid&utm_campaign=spring_sale
このようなURLを含む広告を過去に配信していた場合、そのURLがユーザーによってコピー&ペーストされ、以下のような場所で拡散されることがあります。
- 個人のSNS投稿(Twitter、Facebook、LINEなど)
- ブログ記事やレビューサイト
- オンライン掲示板やコミュニティサイト
- メールやメッセージアプリ
ユーザーが「このページ良かったよ!」とシェアする際に、UTMパラメータ付きのURLをそのままコピーしてしまうのです。
なぜ問題なのか?
UTMパラメータは、URLに含まれている限り永続的に有効です。そのため、拡散されたリンクを別のユーザーがクリックすると、たとえそれが広告経由ではなく「自然な流入」であっても、アクセス解析ツールはURL内のタグを読み取り、「ig / paid(Instagram広告経由)」と判定してしまいます。
つまり、広告配信を停止した後も、過去の広告URLが残り続けている限り、paidとしてカウントされるセッションが発生し続けるのです。
実際によくあるシナリオ
- 1年前に実施したキャンペーンの広告URLが、まとめサイトに掲載されている
- インフルエンサーが過去に紹介した際のリンクが、今でもブログ記事に残っている
- ユーザーがブックマークしていたUTM付きURLから定期的にアクセスしている
このような「時間差での流入」が、現在の広告配信状況と計測データのズレを生み出します。
原因2:ストーリーズなどでの「タグ付きURL」の使い回し
次に多いのが、運用担当者による設定ミスです。
本来、UTMパラメータ付きのURLは広告配信専用として使用すべきですが、以下のような場所に誤って掲載してしまうケースがあります。
- Instagramのプロフィール欄のリンク
- Linktreeなどのリンクまとめツール
- ストーリーズ投稿へのリンク
- インフルエンサーへ提供したPR用URL
具体例
例えば、広告運用チームが作成した以下のようなURLを、SNS運用チームがそのままプロフィールに設定してしまったとします。
https://example.com/campaign?utm_source=ig&utm_medium=paid
この場合、プロフィールリンクをクリックしたすべてのユーザーが「広告経由」として集計されます。実際にはオーガニック(自然流入)であるにもかかわらず、です。
インフルエンサーマーケティングでの注意点
インフルエンサーに商品やサービスを紹介してもらう際、計測用のURLを提供することがあります。このとき、広告用のUTMパラメータをそのまま使ってしまうと、インフルエンサー経由の流入が「paid」として計測されてしまいます。
正しくは、インフルエンサー用には別途utm_medium=influencerなどの専用パラメータを設定すべきです。
原因3:GA4などの「アトリビューション」設定の影響
Googleアナリティクス4(GA4)では、データドリブンアトリビューションという高度な計測モデルが採用されています。
これは、コンバージョンに至るまでの複数のタッチポイント(接触)を評価し、それぞれに適切な貢献度を割り当てる仕組みです。
具体的なシナリオ
例えば、あるユーザーが以下のような行動をとったとします。
- 1週間前:Instagram広告をクリックしてサイトを訪問(離脱)
- 3日前:Google検索から再訪問(商品を比較)
- 今日:ブックマークから直接アクセスし、購入
この場合、アトリビューションの設定によっては、「最初の接触」であるInstagram広告(ig / paid)に一定の貢献度が割り当てられ、セッションとして記録されることがあります。
ラストクリックとファーストクリックの違い
- ラストクリックモデル:コンバージョン直前の流入元のみを評価
- ファーストクリックモデル:最初の流入元を重視
- データドリブン:複数の接触を総合的に評価
GA4のデフォルト設定では、直近の流入だけでなく、過去7日間(または設定によっては30日間)の接触履歴を参照します。そのため、現在は広告を配信していなくても、過去の広告接触が記録として残り、「ig / paid」として表示されることがあるのです。
確認方法
GA4の「探索」機能で、コンバージョン経路レポートを確認すると、ユーザーがどのような経路でサイトに到達したかを時系列で追跡できます。これにより、「ig / paid」が最初の接触だったのか、最後の接触だったのかを判別できます。
原因4:外部ツールやリダイレクトの誤設定
意外と見落としがちなのが、外部ツールや計測システムの設定です。
以下のようなツールで、Instagram流入を自動的に「paid」として分類する設定になっている可能性があります。
- 短縮URLサービス(Bitly、TinyURLなど)
- マーケティングオートメーションツール(HubSpot、Marketoなど)
- タグマネージャー(Google Tag Manager、Adobe Launchなど)
- リダイレクト設定(.htaccessやサーバー側の処理)
実例:短縮URL設定のミス
例えば、Bitlyなどの短縮URLサービスで、Instagram向けのリンクを作成する際、デフォルトでUTMパラメータが自動付与される設定になっていることがあります。
この設定を意識せずに使用すると、すべてのInstagram流入が「paid」として記録されてしまいます。
タグマネージャーでの自動タグ設定
Google Tag Managerなどで、「Instagramからのリファラー」を検出すると自動的に「utm_medium=paid」を付与するルールを設定しているケースもあります。
過去の担当者が設定したルールが残っている場合、現在の運用チームが気づかないまま誤った計測が続いていることがあります。
意外な盲点:Meta広告の「Advantage+カタログ広告」
ここで、多くのマーケターが見落としがちな重要なポイントをお伝えします。
それが、Meta(旧Facebook)のAdvantage+カタログ広告です。
Advantage+カタログ広告とは?
これは、Metaが提供する高度な自動配信システムで、以下の特徴があります。
- LP(ランディングページ)を個別指定しない
- ユーザーの興味、関心、意向、行動データに基づいて、関連商品を自動的にレコメンド
- Instagram、Facebook、Audience Networkなど、複数のプラットフォームで配信
- 商品カタログと連携し、動的にクリエイティブを生成
この広告形式では、配信先や表示される商品が自動最適化されるため、運用者が意図していないページへの広告流入が発生することがあります。
なぜ「ig / paid」として計測されるのか?
Advantage+カタログ広告経由のトラフィックには、Metaの広告システムを経由したことを示す特殊なパラメータが付与されます。
具体的には、URLに以下のような文字列が含まれます。
- fbclid:Facebook Click Identifier(Meta広告全般で使用)
- aem:広告効果測定用の独自パラメータ
この「aem」パラメータは、Metaの広告システムを経由したトラフィックにのみ付与されるため、このパラメータがあれば、確実にMeta広告配信によるものと断定できます。
発見方法:GA4での確認手順
GA4で以下の手順を実行してください。
- 「探索」メニューを開く
- 自由形式レポートを作成
- ディメンションを以下のように設定:
- 行:日付
- 列:セッションの参照元/メディア、ランディングページ+クエリ文字列
- クエリ文字列の中身を確認
ここで「fbclid」と並んで「aem」という文字列が確認できた場合、それはAdvantage+カタログ広告などのMeta広告配信によるトラフィックです。
非常に細かいので一見しただけだと見落としてしまいがちです。

対策:広告配信状況を再確認する
もし「aem」パラメータが見つかった場合、以下を確認してください。
- Meta広告マネージャーで、Advantage+カタログ広告が現在も配信中ではないか
- 過去に設定した自動配信キャンペーンが停止し忘れられていないか
- 他の担当者やエージェンシーが別アカウントで配信していないか
Advantage+広告は設定が自動化されているため、運用者自身が「配信している」という認識を持ちにくいのが特徴です。
確認すべきポイント:原因を特定するためのチェックリスト
ここまで解説した原因を踏まえ、実際に「ig / paid」の原因を特定するために確認すべきポイントをまとめます。
1. キャンペーン名を確認する
GA4の「トラフィック獲得レポート」や「探索」機能で、セッションのキャンペーンディメンションを追加し、以下を確認してください。
- 現在は動いていないはずの古いキャンペーン名が表示されていないか
- 過去に使用したプロモーション名やイベント名が記録されていないか
古いキャンペーン名が表示されている場合、そのキャンペーン用のURLが今もどこかで使われている証拠です。
2. ランディングページを確認する
「ig / paid」として計測されているセッションが、どのページに流入しているかを確認します。
- 特定の広告専用ランディングページ(LP)に集中していないか
- キャンペーン期間限定のページにアクセスが続いていないか
- 商品詳細ページやブログ記事など、通常のページに分散しているか
もし特定のLPに集中している場合、そのLP用の広告URLが外部サイトやSNSに残っている可能性が高いです。
Google検索で「site:twitter.com "example.com/campaign"」などと検索すると、外部サイトに残っているリンクを発見できることがあります。
3. クエリ文字列(URLパラメータ)の内容を確認する
GA4の探索レポートで、「ランディングページ+クエリ文字列」ディメンションを使用し、実際のURLパラメータを確認します。
- UTMパラメータが付与されているか
- fbclidやaemなどのMeta独自パラメータがあるか
- 想定外のパラメータが付与されていないか
これにより、流入の「経路」を正確に把握できます。
4. リファラー情報を確認する
可能であれば、リファラー(参照元URL)の情報も確認しましょう。
GA4では、「セッションの参照元」や「ページリファラー」ディメンションで確認できます。
- Instagram公式ドメイン(instagram.com)からの流入か
- 外部サイト(ブログ、まとめサイトなど)経由か
- メールやメッセージアプリからの直接流入か
これにより、「ig / paid」と判定された経路が本当にInstagram経由なのか、それとも別ルートなのかを判別できます。
5. タグマネージャーや外部ツールの設定を確認する
Google Tag ManagerやAdobe Launchなどを使用している場合、以下を確認します。
- Instagram流入に対する自動タグ付け設定がないか
- 古い計測ルールやトリガーが残っていないか
- 短縮URLサービスのデフォルト設定が適切か
特に、複数の担当者が関わっている場合や、過去の担当者から引き継いだ環境では、設定の全容が把握できていないことがあります。
まとめ:正確な計測のために定期的な見直しを
Instagram広告を出稿していないにもかかわらず「ig / paid」として計測されるセッションは、以下の4つの主要原因によって発生します。
- 過去の広告URL(UTMパラメータ付き)の拡散:最も頻繁に起こる原因
- タグ付きURLの使い回し:運用ミスによる誤設定
- アトリビューション設定の影響:過去の接触履歴が反映される
- 外部ツールやリダイレクトの誤設定:見落としがちな設定ミス
さらに、Meta広告のAdvantage+カタログ広告が意図せず配信されているケースも盲点となります。
正確なデータ分析とマーケティング効果測定のためには、以下の習慣が重要です。
- 定期的なデータレビュー:月次でトラフィックデータを確認し、異常値を早期発見
- UTMパラメータの管理ルール:広告用とオーガニック用で明確に使い分ける
- チーム内での情報共有:広告チーム、SNS運用チーム、Web担当者が連携する
- ツール設定の定期監査:タグマネージャーや外部ツールの設定を年に1回は見直す
「ig / paid」の謎を解明することで、より正確なマーケティング分析が可能になります。ぜひこの記事を参考に、自社のデータを見直してみてください。

